愛猫のはなし 甲状腺機能亢進症④ 治療中止~
前回の続きになります。
【11月13日】
前日の嘔吐で体力を消耗したのか、猫はぐったりしたままです。
そんな状態でも、自らの力で一度だけトイレに行きました。
すごいなぁと。
私ならこんな状態で歩いてトイレに行けるかなぁ?なんて考えてました。
往診はお断りしたので、あとは最期までの時間が少しでも楽になれば良いと願うばかりです。
この日がこれまでの中でも一番辛そうでした。
なんとか自力で水は飲みますが、体を支える力が弱く上手く水が飲めないため、舌が水まで届かずに空を切っていました。
水位を上げると舌が水まで届きやすくなるので、体を支えてサポートすると少し上手に水を飲めるようになりました。
頑張れ、という気持ちと、もう頑張らんでいいよ、という気持ちが混在していました。
背中をさすってやることが良いことなのかわかりませんが、何かしてあげたくてずっとさすっていました。
後ろ脚はすでに冷たくほとんど体温を感じませんが、体は温めてあげないほうが猫は楽になれる、とネットにあったのでそのままにしてあげました。毛布を避けるということは、愛猫自身も温まることは望んでいないのだと思って。
何度も何度も、ものすごく呼吸が弱くなって、目視でも息をしているのかどうかわからないほどになりました。
その度にもうダメかも、と思うと自然と涙が出て来て…。
すると、そんな私を見たせいでしょうか、力なんて残ってないはずなのに、愛猫が顔を持ち上げて、キリッとした表情でこちらを見るのです 。
まだ死にませんよ~って言っているようでした。
そんなことを何度繰り返したでしょう、深夜になると、少しだけ呼吸が安定してきました。
眠りたくはないけれど、見守っていたいけれど、ずっと側に居られるのも逆にキツいのかもしれないと思って、眠ることにしました。
眠るからね、無理しなくていいからね、貴女も少し眠りなさいね、と声を掛けて就寝しました。
【11月14日】
物音を聞いた気がして目覚めました。
耳を澄ますと微かに水を飲む音を聞いた気がして、慌てて愛猫の様子を見に行くと、確かに水を飲もうと頑張っていました。
頑張って水を飲もうとする愛猫が少しでも水が飲みやすいように手伝います。
飲み終えるとヨロヨロしながら、また自分の力で寝床に戻ります。
今度の寝床にはミニベンチではなくネコハウスを選びました。
明るくなってきたので、暗い場所のほうが落ち着くのかもしれません。
その様子を見届け、ほとんど減っていない水かさですが、それでも減ったかもしれないのでボールに新しいお水を満々と張りました。
食事を出来ていないので、水だけは気持ちよく飲んで欲しくて。
しばらく様子を見ていると、ネコハウスから出てきて、再びいつものミニベンチへ登って横たわります。
外を見たいかもしれない、と思い玄関を開けると、体を起こして外を伺う素振りを見せて立ち上がりました。
そっと手を添えて手伝うと、自分の力で歩き、玄関内の外を眺められる場所に背筋をシャンと伸ばして座りました。
こんな力が残ってるのか、と泣きたくなりました。
風の強い朝でしたから、いろんな匂いがしたのでしょうか?
鼻を上げてクンクンとさせ、外を匂いを嗅ぎ、耳を動かしてスズメとカラスの声を聴いていました。
あまりにも風が強いので、そろそろ休もうか?と声をかけると、意味がわかったようにベンチに戻って横たわります。
やはりベンチの方が居心地が良いのでしょう。
眠ることも出来ず、食事も取れず、僅かな水だけで過ごして今日で5日目です。
心筋症を起こしていると言われましたが、強い心臓を持っているのだと思います。
母に少し水を飲めることを伝え、水をボールのスレスレまで満たしておいて欲しいとお願いして仕事へと向かいました。
日中は相変わらず横たわり、あまり水も飲めないようでした。
しかし、帰ってから声をかけに行くと、小さな奇跡がおきました。
撫でてやると、喉を鳴らしたのです。
キツイなら無理しなくていいよ、というのに撫でるとずっとゴロゴロと喉を鳴らすのです。
体力を使わせてしまっていないだろうか、と不安になりつつも、喉を鳴らすのは居てほしい、ということかもしれないと思いなるべく付き添っていました。
ほんの少しですが、大好きだったゴムブラシでブラッシングもしてあげました。
しかし、付き添う間中、ゴロゴロと喉を鳴らすのでさすがに体力消耗が不安になってきて、撫でながら付き添う、少し時間を置く、ということを繰り返しました。
心なしか、水を差し出すとしっかり飲めるようになっているような気もします。
何より、昨日はあんなに冷たかった後脚にも、わずかながら体温が戻っている気もします。
しかし、変わらずキツくてどうしようもないのでしょう、ネコハウスとベンチの上を行ったり来たりして寝床を変えたり、体勢を変えたりしていました。
それでも、水の飲み方や後脚に体温が戻ったことで、もしかしてなんて都合の良い奇跡を頭の片隅に考えてしまいました。
現実はそううまくは行かないのですが……。
もう少し続きます。